2020年04月20日
ナイフメンテナンス ヒルトのガタ修正編
いゃぁ、おもろいわ。さすが『スーパー』な方々はスーパーだけあってスーパーな発言するね。
「センパイ、ナイス装備です!ナイス銃です!」「ナイスファイトです!」「相手ビビってる!」←中坊のクラブ活動か?
と身内同士で誉め合うスーパーな感覚をお持ちの方々はほっといて老人独自の視点観点で記事を進めて参ります。
先ずは現状把握。ヒルトとポメル(エンドキャップ)に隙間が確認出来ると思います。
この個体も古いパイロットサバイバルナイフの例に漏れず相当ガタが出ておりますね。
大半のヒルトとポメルのガタ(隙間)はレザーハンドルが乾燥し、積層しているレザーワッシャが肉痩せすることによって起こります。
その他の原因としては錆の発生により各金属パーツが痩せてレザーワッシャとの隙間が生じるケースがあります。
この個体の錆は比較的軽度な部類ですので、ほぼレザーワッシャの肉痩せで間違い無いと思われます。
ポメルのハンマー部分を確認しますと、何やら塗料で塗装された形跡があります。
錆への対策でしょうか?
一説には白ペイントの物がナム戦ロットと言われておりますが、ナム戦後に製造された物にも同じ処理が施された個体を複数確認しております。
ちなみにこの個体はご覧の通り白で塗装された後に黒で再塗装されていました。
メーカーが軍納入時に施した仕上げとは考えにくく、ナイフが個々の将兵に支給された後に軍で「ハンマー部分白く塗っとけや!マヨネーズ。」的な指導教育がなされていた可能性があります。
これは推測の域を出ませんが、ハンマー部分の白ペイントは夜間や海中への墜落など視界が悪い状況下でサバイバルベストからナイフを取り出す際に少しでも視認性を上げるのが目的ではないでしょうか?
『スーパー』じゃない老人にはよく分かりません。
ポメルの固定方法は製造メーカーや年代、ロットによって様々です。
ざっくりとカミラスは溶接止め、オンタリオはカシメ止めとなっております。
オンタリオは溶接を削らなくてもカシメを削るだけでポメルの取り外しが可能です。
「カミラスより作りが悪い。」と言ってしまえばそれまでですが、メンテナンス性の高さは評価して良いと思います。
そもそもパイロットサバイバルナイフは戦闘機などのパイロットが撃墜されてから救出されるまでのサバイバルに使用する『使い捨てのナイフ』なので、リペアして長く使う事が前提の設計では無いのです。
例外として初期の6インチブレードモデルは初期MCナイフのようなネジ込み式のポメルでリペア可能な設計でした。
60年代から広まった使い捨て文化や長期に渡って大量に物資を飲み込む事となったベトナム戦争は個人装備にも影響し、軍用ナイフに限らず実に様々な装備がコストダウンされています。
カシメを削る前に養生テープでポメルの養生を行います。カシメ以外の部分を削らないようにするのが目的です。
削る道具としてはリューターとダイヤモンドビットがあればほんの数秒ですが、精密ヤスリで地道にシコシコやっても良いでしょう。
タングからポメルが抜けました。
ポメルとレザーワッシャの間には金属のワッシャがありますので、これも取り外します。
ポメルと金属ワッシャの状態を確認。
やはり錆は軽度のようです。錆取り剤にドブ漬けにして錆を除去した後に黒染めを施し再使用します。
画像はタングの錆を削る為にレザーハンドルの養生をした状態です。
今回はフルレストアではありませんので、レザーワッシャは取り外しません。
タングの錆は可能な限り除去しておきます。
錆を削った後は地金が出て錆が発生しやすくなります。
一時的に皮革用のオイルでも塗っておけば錆止め処理をするまで錆の再発を防ぐ事が出来ます。
画像は新造したレザーワッシャです。
シースを製作したハギレでいくらでも製作可能なのがありがたい。いっそ補修パーツとしてオクに出品しようか。
既存のレザーワッシャが肉痩せした分の厚みを新たなレザーワッシャを挟み込むことによって補ってやる訳です。
レザーハンドルの状態が悪い場合は部分的に交換したり、新造品に全交換する場合もあります。
製造年が古い個体は大なり小なりのリペアが必要になるケースが多いです。
ご自身でメンテナンスが出来ない方はヴィンテージ物には手を出さない方が無難でしょう。
ナム戦関係でパイロットサバイバルナイフを購入する殆どの方が実用では無く、観賞コレクション目的でしょうが…
老人はスーパーコレクターでもスーパーリエナクターでもありません。再びナイフとして使える実用本意のリペアを行います。
※オークションの質問でリペア依頼をされる方がおられますが、一般の方からのリペア依頼には対応しておりません。
リペアは現行民生モデルの新品(6000円前後)を買う以上に費用が掛かります。新品への買い替えを強くオススメします。
金属パーツの錆取り黒染め後に圧入とカシメを行えばガタの修正は完了です。
次回は金属パーツの錆取り黒染め編です。ご期待下さい。
Posted by 老人ナイフ at 21:02
│ナイフメンテナンス